2024年10月13日、晴れた日曜日の朝。
物価の高騰に賃金上昇率が追い付かないため生活が苦しく、「日本政府の舵取りが間違っている」「金持ちのためだけの利権だけで、庶民の生活は困窮している」と政治に不信感を抱く人が多い。
政治に深く関心がある方ではないが、政治家を非難したり揶揄する声には賛同している。
今の政治を絶賛している人に会ったことがない。
会ったことがないということは、現状に満足しているということではなく、ある程度の不満はいつの時代にだってあるさっていう思いもあるから現実を受け入れているだけなのかもしれない。
※ 政治に深く関心はないにしろ現状の日本物申すといえば大それたことだが、良い波風を立てたいと思っているので、選挙には必ず行く。これは選挙権が得られた日から変わらない行動である。
と、前置きが長くなったが、言いたいことは、
「日本に生まれただけで幸せ」
これはもう間違いないのではないかと勝手に思っている。
急に「日本に生まれただけで幸せー!!」なんて言い出すとこれはもう宗教の勧誘や高価な開運グッズでも買わされやしないかと心配する以外なにものでもないが、心配ご無用(と言っても心配していないだろうけど)
「ハイパーハードボイルドグルメリポート 」上出遼平 を読んだからである。
どういう経緯で読むことになったかはに、Amazonの自己啓発本を見ていて、おすすめに出てきて、”ハイパー”の文字が気になってクリックし、レビューを読んでヤバそうだと思ってからだ(たぶん)。
どうでもいいことだが、”ハイパー”の文字が気になったのは、僕の大好きな高城剛氏の肩書きが”ハイパーメディアクリエイター”だったからである。(詳しくも後述もなし)
既出の本では、リベリアだのケニアでの食事について出てくる。
日本には、給料が少なすぎる、または仕事がなくて食事ができないという人はほとんどいないはず。
セーフティーネットもそれなりにしっかりしているから飢え死にしたりすることはまれなんじゃないか。飢え死にすればニュースになるほどである。
そして、
役所や体制が非難される → セーフティーネットに関して審査が通りやすくなる
という順序で好循環だと思っている。
ただ、羞恥心やプライドや見栄の申請する側の人の中身の問題で申請しない人もいると聞く。
1日1食しか食べれません。
しかもお金があるときしか食事ができないから、1日と言わず2、3日食事ができないなんて人は日本にはほとんどいない。
路上生活者でさえ支援団体や食糧の救済があり、食事すらできないという状況は本当に稀。
で、この本に戻ると空腹を紛らわせるために、シンナーを吸ってたりする子どもたちがいるのだ。
食事をするよりシンナーを買った方が安いうえに、空腹感がなくなり、さらには幸福感も得られるというのがその理由だ。
シンナー15円、食事240円。
シンナーは安いし、幸福感も得られるが、そのデメリットとして、当然のごとく体を蝕み、寿命を縮め、日常生活にもまともに送れない。
倫理観なんて関係ない。生きていくというのはそういうことなのだ。
リベリアでは女性が体を売って一回200円。
芋の葉っぱとライス特盛150円、残り50円がコカイン代。
食事時には、上出さんにもひとくち差し上げている。
「ラフテー(取材の女性)は、今幸せ?」
「私は幸せだよ。ストリートでお金を稼いで、ご飯を食べて家に帰って眠れるんだから」
取材時で10年間この仕事を続けているとのこと。将来の夢は億万長者。
リベリアの文中から抜粋した6行だが、いま自分がどれほど恵まれているか考えさせられる。
最低限の義務教育を受けられ、生きていて「今日殺されるかもしれない」ということを考えなくても済むし、食べるもがなくて飢え死にするかもしれないなんて考えもしない。
これだけで幸せだ。
ないものに目を向けるのではなくて、あるものに目を向ければ、本当に有り余るほど持っている。
この本を読めば読むほど、日本で政治家が悪いだの、会社が悪いだの言える余裕があるだけでも、いかに自分が置かれている環境が良いのかも感じることができる。
自分では絶対にできない(たぶん大多数の人ができないはず)であろう体験を本を通して得られる。
一歩間違えば命を失う可能性のある危険地帯や黒い社会の人達のところへ、仕事とはいえ自ら入っていくなんてことはできない。
本を読み進めると、上出さんという人間自体にも興味が湧き、おもろい人なんだなと感じるし、何より文章がそれに輪をかけておもろい。なので、勝手に関西人かと思っていたら、生まれも育ちも東京だという現実にビックリした。しかも現時点ではNY在住。
多くの人は、テレビ番組でハイパーハードボイルドグルメリポートを知ったのかもしれないが、僕の場合は本から入って映像(Youtube)にいったという流れである。
本を読むと、これはどんな場面なのか、この人ってどんな人なのかなと思って映像見ると、ヤバい。
本で書かれているのに誇張といったものは一切なく、映像だとさらに怖さが半端じゃない。
シラフで取材なんてできないだろうと思うような怖さ。本当に、一歩間違わなくても死んでしまうのではないかというものがある。
上出さんの命を削りながらの取材。
本編とは関係ないのかもしれないが、イノマーさんの最後を撮った「さいごに」というあとがきみたいなものの凄く刺さる。
これだけでも上出さんという人が垣間見えるし、ここだけでも読む価値がある。
この本は良い意味で、価値観を揺さぶる本である。
言い方が悪いが下を見れば自分がどれほど恵まれているかを確認することになるが、本当に平和ボケしている日本人のひとりとして、この本は痺れる。
人生に行き詰まっている、会社に行くのが嫌だ、楽しいことが何もないなど、人生を悪い面に焦点を当てがちな性格の人には本当に勧めたい。
ただ生まれた場所が日本というだけでこんなにも恵まれているのかと嫌でも思い知ることになる。
ときどき妻という単語が出てきて、「帰国して妻の食事を」みたいな表現があり、この人を伴侶に選ぶ人は大きな器で、何事も受け入れる、人生達観した一般人なんだろうなと勝手に想像していたが、まったく違った。
ネットで上出さんのことを調べていくと、奥さんは元テレビ東京のアナウンサー大橋未歩さんであった。
それまたビックリ。
「アナウンサーかいッ!」
上出さんだけでなく、大橋さんふくめ、今後おふりの動向が気になって仕方ない。
上出さん長生きして、人の感性をゆさぶるものをたくさんつくってください。